ニュースレター「サンゴ礁の自然環境」

2017年10月号

知ってますか? スクガラス

2014年11月号

スナギンチャクの繁殖

2015年8月号

スツボサンゴはどこへ行く?

スクガラスの作り方 獲ったスクをすぐに洗浄後、食塩に混ぜ、約3ヶ月間熟成させます。そうすることによって、多くのメリットがあります。①食塩と混ぜることで、スクの水分量を低下、および高食塩濃度を維持し、防腐・抗菌効果を持たせる。②酵素反応によってタンパク質を分解し、旨味のもとであるグルタミン酸を作る。 ③好塩酵母(高い塩濃度環境を好む酵母)のはたらきによって魚の嫌な臭いの原因を分解する。そして熟成後は瓶詰めされ、完成します。このように、製造工程を見ていくと、食材をいかに長持ちさせ、美味しくいただくかという先人達の工夫が伺えますね。そして、スクガラスは地元の直売所やスーパーなどで販売されます(価格は500~1,000円程)。 最後に 昨今の世界的な魚食ブームの裏で、日本人が魚を食べなくなっています。これは深刻な問題であり、平成28年度の水産庁の報告では、1人1日当たりの魚介類の摂取量は今もなお減少傾向にあります。このままでは、若い世代が魚に対して興味をもつきっかけが少なくなってしまい、世界に誇る日本の魚食文化が衰退してしまいます。それは、海に囲まれた島国に生き、多種多様な魚介類に恵まれた日本人にとって非常にもったいないような気がします。そこで、今回のニュースレターでは、沖縄の代表的な魚食、「スクガラス」に着目して執筆させて頂きました。本コラムをきっかけに読者の皆さまに沖縄(あるいは日本)の魚食文化に対して関心を持って頂き、実際にいろいろな魚を味わって頂ければ、筆者としても嬉しいかぎりです。 ・角野猛、遠藤英子、会田久仁子、角野幸子、 山田幸二「沖縄の塩辛・スクガラスの諸成分および微生物について」、 『日本調理科学会誌』第3巻 第3号、日本調理科学会、1999年、 240-243頁. ・国立研究開発法人水産研究・教育機構 中央水産研究所、水産加工品のいろいろ「すくがらす」 http://nrifs.fra.affrc.go.jp/kakou/souran/sukugarasu/. ・水産庁、平成28年度水産の動向、115-116頁. 執筆者 福永 耕大
知ってますか? スクガラス
スクガラスって何? 三重県生まれの筆者は、大学進学のために沖縄へとやってきました。沖縄初心者であった筆者は、およそ5年前に、はじめて「スクガラス」の名前を耳にしました。え?何それ??そう思いました。沖縄の伝統的なガラスのお土産かな?それとも、沖縄の固有のカラスの仲間かな?と。今、読者の皆さまも同じように思っていることでしょう。そんな筆者でしたが、ついこの間、念願の「スクガラス」デビューを果たしました(写真1)。そこで、今回のニュースレターはこの「スクガラス」に関して執筆させて頂きます。
写真1 筆者、はじめてのスクガラス、塩加減と島豆腐が絶妙にマッチ。警戒していた魚の臭いがなく食べやすかったので、驚いた表情。
スクガラスの正体 実は、スクガラスはガラスでもカラスでもなく、食べ物なのです。沖縄の方言では、「スク=アイゴの稚魚」で、「カラス=塩辛」を意味します。つまり、魚の塩辛のことです。他の沖縄の伝統的な塩辛としては、この他にもウマガラス(シャコガイ)、ワタガラス(カツオの内臓)、イチャガラス(イカ)などがあります。一般的に、スクガラスは島豆腐にのせて食べます。スクは同じ方向にきれいに並べられており、かつて群れであったことを彷彿させますね。その見た目は衝撃的で、まさにインスタ映え間違いありません(写真2)。
写真2 スクガラス豆腐、中央の赤い実は泡盛に漬けたトウガラシ。薬味のネギとショウガをのせていただきます。スクは柔らかく骨もそれほど気にならない。しかし、背びれが刺さるので食べるときは前から。
スクの獲り方 スクは太平洋中西部からインド洋にかけてのサンゴ礁域に生息する熱帯・亜熱帯性の魚です(写真3)。スクは基本的に動物プランクトンを食べています。しかし毎年旧暦の6月の大潮になると浅瀬の海藻を食べるために、イノー(サンゴ礁内の浅瀬)に集まってきます。そのため、スク漁はこの時期の恒例行事となっています。海藻を食べたスクは臭みが強いため、浅瀬に集まってきたスクが海藻を食べる前に手早く漁を行わなければなりません。ですので、県産の獲れたばかりのスクは沖縄の旬の味覚ともいえます。スクは刺身としても食べられますが(これもいつかは食べてみたい)、その大半はスクガラスとして加工されます。ちなみに、成魚のアイゴも食べることができて、塩で味付けしたマース煮が有名です。
写真3 (左)岸に集まってきたスク(ゴマアイゴ Siganus guttatus)、全長2.5センチ程、(右)ゴマアイゴ成魚、全長25センチ程。注:スクガラスに使われるスクはシモフリアイゴ S. canaliculatusや、アミアイゴ S. spinusというアイゴの仲間。
スクガラスの作り方 獲ったスクをすぐに洗浄後、食塩に混ぜ、約3ヶ月間熟成させます。そうすることによって、多くのメリットがあります。①食塩と混ぜることで、スクの水分量を低下、および高食塩濃度を維持し、防腐・抗菌効果を持たせる。②酵素反応によってタンパク質を分解し、旨味のもとであるグルタミン酸を作る。 ③好塩酵母(高い塩濃度環境を好む酵母)のはたらきによって魚の嫌な臭いの原因を分解する。そして熟成後は瓶詰めされ、完成します。このように、製造工程を見ていくと、食材をいかに長持ちさせ、美味しくいただくかという先人達の工夫が伺えますね。そして、スクガラスは地元の直売所やスーパーなどで販売されます(価格は500~1,000円程)。 最後に 昨今の世界的な魚食ブームの裏で、日本人が魚を食べなくなっています。これは深刻な問題であり、平成28年度の水産庁の報告では、1人1日当たりの魚介類の摂取量は今もなお減少傾向にあります。このままでは、若い世代が魚に対して興味をもつきっかけが少なくなってしまい、世界に誇る日本の魚食文化が衰退してしまいます。それは、海に囲まれた島国に生き、多種多様な魚介類に恵まれた日本人にとって非常にもったいないような気がします。そこで、今回のニュースレターでは、沖縄の代表的な魚食、「スクガラス」に着目して執筆させて頂きました。本コラムをきっかけに読者の皆さまに沖縄(あるいは日本)の魚食文化に対して関心を持って頂き、実際にいろいろな魚を味わって頂ければ、筆者としても嬉しいかぎりです。 ・角野猛、遠藤英子、会田久仁子、角野幸子、 山田幸二「沖縄の塩辛・スクガラスの諸成分および微生物について」、 『日本調理科学会誌』第3巻 第3号、日本調理科学会、1999年、 240-243頁. ・国立研究開発法人水産研究・教育機構 中央水産研究所、水産加工品のいろいろ「すくがらす」 http://nrifs.fra.affrc.go.jp/kakou/souran/sukugarasu/. ・水産庁、平成28年度水産の動向、115-116頁. 執筆者 福永 耕大
知ってますか? スクガラス
スクガラスって何? 三重県生まれの筆者は、大学進学のために沖縄へとやってきました。沖縄初心者であった筆者は、およそ5年前に、はじめて「スクガラス」の名前を耳にしました。え?何それ??そう思いました。沖縄の伝統的なガラスのお土産かな?それとも、沖縄の固有のカラスの仲間かな?と。今、読者の皆さまも同じように思っていることでしょう。そんな筆者でしたが、ついこの間、念願の「スクガラス」デビューを果たしました(写真1)。そこで、今回のニュースレターはこの「スクガラス」に関して執筆させて頂きます。
写真1 筆者、はじめてのスクガラス、塩加減と島豆腐が絶妙にマッチ。警戒していた魚の臭いがなく食べやすかったので、驚いた表情。
スクガラスの正体 実は、スクガラスはガラスでもカラスでもなく、食べ物なのです。沖縄の方言では、「スク=アイゴの稚魚」で、「カラス=塩辛」を意味します。つまり、魚の塩辛のことです。他の沖縄の伝統的な塩辛としては、この他にもウマガラス(シャコガイ)、ワタガラス(カツオの内臓)、イチャガラス(イカ)などがあります。一般的に、スクガラスは島豆腐にのせて食べます。スクは同じ方向にきれいに並べられており、かつて群れであったことを彷彿させますね。その見た目は衝撃的で、まさにインスタ映え間違いありません(写真2)。
写真2 スクガラス豆腐、中央の赤い実は泡盛に漬けたトウガラシ。薬味のネギとショウガをのせていただきます。スクは柔らかく骨もそれほど気にならない。しかし、背びれが刺さるので食べるときは前から。
スクの獲り方 スクは太平洋中西部からインド洋にかけてのサンゴ礁域に生息する熱帯・亜熱帯性の魚です(写真3)。スクは基本的に動物プランクトンを食べています。しかし毎年旧暦の6月の大潮になると浅瀬の海藻を食べるために、イノー(サンゴ礁内の浅瀬)に集まってきます。そのため、スク漁はこの時期の恒例行事となっています。海藻を食べたスクは臭みが強いため、浅瀬に集まってきたスクが海藻を食べる前に手早く漁を行わなければなりません。ですので、県産の獲れたばかりのスクは沖縄の旬の味覚ともいえます。スクは刺身としても食べられますが(これもいつかは食べてみたい)、その大半はスクガラスとして加工されます。ちなみに、成魚のアイゴも食べることができて、塩で味付けしたマース煮が有名です。
写真3 (左)岸に集まってきたスク(ゴマアイゴ Siganus guttatus)、全長2.5センチ程、(右)ゴマアイゴ成魚、全長25センチ程。注:スクガラスに使われるスクはシモフリアイゴ S. canaliculatusや、アミアイゴ S. spinusというアイゴの仲間。
スクガラスの作り方 獲ったスクをすぐに洗浄後、食塩に混ぜ、約3ヶ月間熟成させます。そうすることによって、多くのメリットがあります。①食塩と混ぜることで、スクの水分量を低下、および高食塩濃度を維持し、防腐・抗菌効果を持たせる。②酵素反応によってタンパク質を分解し、旨味のもとであるグルタミン酸を作る。 ③好塩酵母(高い塩濃度環境を好む酵母)のはたらきによって魚の嫌な臭いの原因を分解する。そして熟成後は瓶詰めされ、完成します。このように、製造工程を見ていくと、食材をいかに長持ちさせ、美味しくいただくかという先人達の工夫が伺えますね。そして、スクガラスは地元の直売所やスーパーなどで販売されます(価格は500~1,000円程)。 最後に 昨今の世界的な魚食ブームの裏で、日本人が魚を食べなくなっています。これは深刻な問題であり、平成28年度の水産庁の報告では、1人1日当たりの魚介類の摂取量は今もなお減少傾向にあります。このままでは、若い世代が魚に対して興味をもつきっかけが少なくなってしまい、世界に誇る日本の魚食文化が衰退してしまいます。それは、海に囲まれた島国に生き、多種多様な魚介類に恵まれた日本人にとって非常にもったいないような気がします。そこで、今回のニュースレターでは、沖縄の代表的な魚食、「スクガラス」に着目して執筆させて頂きました。本コラムをきっかけに読者の皆さまに沖縄(あるいは日本)の魚食文化に対して関心を持って頂き、実際にいろいろな魚を味わって頂ければ、筆者としても嬉しいかぎりです。 ・角野猛、遠藤英子、会田久仁子、角野幸子、 山田幸二「沖縄の塩辛・スクガラスの諸成分および微生物について」、 『日本調理科学会誌』第3巻 第3号、日本調理科学会、1999年、 240-243頁. ・国立研究開発法人水産研究・教育機構 中央水産研究所、水産加工品のいろいろ「すくがらす」 http://nrifs.fra.affrc.go.jp/kakou/souran/sukugarasu/. ・水産庁、平成28年度水産の動向、115-116頁. 執筆者 福永 耕大
知ってますか? スクガラス
スクガラスって何? 三重県生まれの筆者は、大学進学のために沖縄へとやってきました。沖縄初心者であった筆者は、およそ5年前に、はじめて「スクガラス」の名前を耳にしました。え?何それ??そう思いました。沖縄の伝統的なガラスのお土産かな?それとも、沖縄の固有のカラスの仲間かな?と。今、読者の皆さまも同じように思っていることでしょう。そんな筆者でしたが、ついこの間、念願の「スクガラス」デビューを果たしました(写真1)。そこで、今回のニュースレターはこの「スクガラス」に関して執筆させて頂きます。
写真1 筆者、はじめてのスクガラス、塩加減と島豆腐が絶妙にマッチ。警戒していた魚の臭いがなく食べやすかったので、驚いた表情。
スクガラスの正体 実は、スクガラスはガラスでもカラスでもなく、食べ物なのです。沖縄の方言では、「スク=アイゴの稚魚」で、「カラス=塩辛」を意味します。つまり、魚の塩辛のことです。他の沖縄の伝統的な塩辛としては、この他にもウマガラス(シャコガイ)、ワタガラス(カツオの内臓)、イチャガラス(イカ)などがあります。一般的に、スクガラスは島豆腐にのせて食べます。スクは同じ方向にきれいに並べられており、かつて群れであったことを彷彿させますね。その見た目は衝撃的で、まさにインスタ映え間違いありません(写真2)。
写真2 スクガラス豆腐、中央の赤い実は泡盛に漬けたトウガラシ。薬味のネギとショウガをのせていただきます。スクは柔らかく骨もそれほど気にならない。しかし、背びれが刺さるので食べるときは前から。
スクの獲り方 スクは太平洋中西部からインド洋にかけてのサンゴ礁域に生息する熱帯・亜熱帯性の魚です(写真3)。スクは基本的に動物プランクトンを食べています。しかし毎年旧暦の6月の大潮になると浅瀬の海藻を食べるために、イノー(サンゴ礁内の浅瀬)に集まってきます。そのため、スク漁はこの時期の恒例行事となっています。海藻を食べたスクは臭みが強いため、浅瀬に集まってきたスクが海藻を食べる前に手早く漁を行わなければなりません。ですので、県産の獲れたばかりのスクは沖縄の旬の味覚ともいえます。スクは刺身としても食べられますが(これもいつかは食べてみたい)、その大半はスクガラスとして加工されます。ちなみに、成魚のアイゴも食べることができて、塩で味付けしたマース煮が有名です。
写真3 (左)岸に集まってきたスク(ゴマアイゴ Siganus guttatus)、全長2.5センチ程、(右)ゴマアイゴ成魚、全長25センチ程。注:スクガラスに使われるスクはシモフリアイゴ S. canaliculatusや、アミアイゴ S. spinusというアイゴの仲間。
スクガラスの作り方 獲ったスクをすぐに洗浄後、食塩に混ぜ、約3ヶ月間熟成させます。そうすることによって、多くのメリットがあります。①食塩と混ぜることで、スクの水分量を低下、および高食塩濃度を維持し、防腐・抗菌効果を持たせる。②酵素反応によってタンパク質を分解し、旨味のもとであるグルタミン酸を作る。 ③好塩酵母(高い塩濃度環境を好む酵母)のはたらきによって魚の嫌な臭いの原因を分解する。そして熟成後は瓶詰めされ、完成します。このように、製造工程を見ていくと、食材をいかに長持ちさせ、美味しくいただくかという先人達の工夫が伺えますね。そして、スクガラスは地元の直売所やスーパーなどで販売されます(価格は500~1,000円程)。 最後に 昨今の世界的な魚食ブームの裏で、日本人が魚を食べなくなっています。これは深刻な問題であり、平成28年度の水産庁の報告では、1人1日当たりの魚介類の摂取量は今もなお減少傾向にあります。このままでは、若い世代が魚に対して興味をもつきっかけが少なくなってしまい、世界に誇る日本の魚食文化が衰退してしまいます。それは、海に囲まれた島国に生き、多種多様な魚介類に恵まれた日本人にとって非常にもったいないような気がします。そこで、今回のニュースレターでは、沖縄の代表的な魚食、「スクガラス」に着目して執筆させて頂きました。本コラムをきっかけに読者の皆さまに沖縄(あるいは日本)の魚食文化に対して関心を持って頂き、実際にいろいろな魚を味わって頂ければ、筆者としても嬉しいかぎりです。 ・角野猛、遠藤英子、会田久仁子、角野幸子、 山田幸二「沖縄の塩辛・スクガラスの諸成分および微生物について」、 『日本調理科学会誌』第3巻 第3号、日本調理科学会、1999年、 240-243頁. ・国立研究開発法人水産研究・教育機構 中央水産研究所、水産加工品のいろいろ「すくがらす」 http://nrifs.fra.affrc.go.jp/kakou/souran/sukugarasu/. ・水産庁、平成28年度水産の動向、115-116頁. 執筆者 福永 耕大
知ってますか? スクガラス
スクガラスって何? 三重県生まれの筆者は、大学進学のために沖縄へとやってきました。沖縄初心者であった筆者は、およそ5年前に、はじめて「スクガラス」の名前を耳にしました。え?何それ??そう思いました。沖縄の伝統的なガラスのお土産かな?それとも、沖縄の固有のカラスの仲間かな?と。今、読者の皆さまも同じように思っていることでしょう。そんな筆者でしたが、ついこの間、念願の「スクガラス」デビューを果たしました(写真1)。そこで、今回のニュースレターはこの「スクガラス」に関して執筆させて頂きます。
写真1 筆者、はじめてのスクガラス、塩加減と島豆腐が絶妙にマッチ。警戒していた魚の臭いがなく食べやすかったので、驚いた表情。
スクガラスの正体 実は、スクガラスはガラスでもカラスでもなく、食べ物なのです。沖縄の方言では、「スク=アイゴの稚魚」で、「カラス=塩辛」を意味します。つまり、魚の塩辛のことです。他の沖縄の伝統的な塩辛としては、この他にもウマガラス(シャコガイ)、ワタガラス(カツオの内臓)、イチャガラス(イカ)などがあります。一般的に、スクガラスは島豆腐にのせて食べます。スクは同じ方向にきれいに並べられており、かつて群れであったことを彷彿させますね。その見た目は衝撃的で、まさにインスタ映え間違いありません(写真2)。
写真2 スクガラス豆腐、中央の赤い実は泡盛に漬けたトウガラシ。薬味のネギとショウガをのせていただきます。スクは柔らかく骨もそれほど気にならない。しかし、背びれが刺さるので食べるときは前から。
スクの獲り方 スクは太平洋中西部からインド洋にかけてのサンゴ礁域に生息する熱帯・亜熱帯性の魚です(写真3)。スクは基本的に動物プランクトンを食べています。しかし毎年旧暦の6月の大潮になると浅瀬の海藻を食べるために、イノー(サンゴ礁内の浅瀬)に集まってきます。そのため、スク漁はこの時期の恒例行事となっています。海藻を食べたスクは臭みが強いため、浅瀬に集まってきたスクが海藻を食べる前に手早く漁を行わなければなりません。ですので、県産の獲れたばかりのスクは沖縄の旬の味覚ともいえます。スクは刺身としても食べられますが(これもいつかは食べてみたい)、その大半はスクガラスとして加工されます。ちなみに、成魚のアイゴも食べることができて、塩で味付けしたマース煮が有名です。
写真3 (左)岸に集まってきたスク(ゴマアイゴ Siganus guttatus)、全長2.5センチ程、(右)ゴマアイゴ成魚、全長25センチ程。注:スクガラスに使われるスクはシモフリアイゴ S. canaliculatusや、アミアイゴ S. spinusというアイゴの仲間。
スクガラスの作り方 獲ったスクをすぐに洗浄後、食塩に混ぜ、約3ヶ月間熟成させます。そうすることによって、多くのメリットがあります。①食塩と混ぜることで、スクの水分量を低下、および高食塩濃度を維持し、防腐・抗菌効果を持たせる。②酵素反応によってタンパク質を分解し、旨味のもとであるグルタミン酸を作る。 ③好塩酵母(高い塩濃度環境を好む酵母)のはたらきによって魚の嫌な臭いの原因を分解する。そして熟成後は瓶詰めされ、完成します。このように、製造工程を見ていくと、食材をいかに長持ちさせ、美味しくいただくかという先人達の工夫が伺えますね。そして、スクガラスは地元の直売所やスーパーなどで販売されます(価格は500~1,000円程)。 最後に 昨今の世界的な魚食ブームの裏で、日本人が魚を食べなくなっています。これは深刻な問題であり、平成28年度の水産庁の報告では、1人1日当たりの魚介類の摂取量は今もなお減少傾向にあります。このままでは、若い世代が魚に対して興味をもつきっかけが少なくなってしまい、世界に誇る日本の魚食文化が衰退してしまいます。それは、海に囲まれた島国に生き、多種多様な魚介類に恵まれた日本人にとって非常にもったいないような気がします。そこで、今回のニュースレターでは、沖縄の代表的な魚食、「スクガラス」に着目して執筆させて頂きました。本コラムをきっかけに読者の皆さまに沖縄(あるいは日本)の魚食文化に対して関心を持って頂き、実際にいろいろな魚を味わって頂ければ、筆者としても嬉しいかぎりです。 ・角野猛、遠藤英子、会田久仁子、角野幸子、 山田幸二「沖縄の塩辛・スクガラスの諸成分および微生物について」、 『日本調理科学会誌』第3巻 第3号、日本調理科学会、1999年、 240-243頁. ・国立研究開発法人水産研究・教育機構 中央水産研究所、水産加工品のいろいろ「すくがらす」 http://nrifs.fra.affrc.go.jp/kakou/souran/sukugarasu/. ・水産庁、平成28年度水産の動向、115-116頁. 執筆者 福永 耕大