ニュースレター「サンゴ礁の自然環境」

2018年3月号

サンゴの海の漁業
アギヤーの仕組みと使い方 (資料) 中楯興編著『日本における海洋民の総合研究―糸満系漁民を中心として―』上巻(1987年),65頁. 沖縄大百科事典刊行事務局編『沖縄大百科事典』上巻(1983年),37頁.  2016年の3月に宮古島で撮影された追い込み網漁の映像が公開されていましたので、下記にリンクを載せておきます。この映像ではボンベを背負った海人が魚をアギヤーに追い込むシーンが記録されています。 【アギヤー漁 沖縄の伝統漁師 宮古島市佐良浜】 https://youtu.be/7o6BcPKvg7g?t=10m37s さいごに これまで見てきたように、沖縄には本州ではみられないようなユニークな漁法があり、それはサンゴの海に適応していることが分かります。このことは漁業に限ったことではなく、人の暮らしすべてにおいて同様です。沖縄というとサンゴの海や亜熱帯の植物などが注目されますが、自然環境や東アジア諸国文化から影響を受けたユニークな民俗文化を感じることも粋な沖縄の楽しみのひとつになる。このような事を今回のニュースレターを通して提案できたかと思います。読者の皆さんもぜひ、試してみてください!! 参考文献 沖縄大百科事典刊行事務局編『沖縄大百科事典』上巻,沖縄タイムス社,1983年. 中楯興編著『日本における海洋民の総合研究―糸満系漁民を中心として―』上巻,九州大学出版会,1987年. 糸満市史編集委員会編『糸満市史』資料編12 民俗資料,糸満市役所,1991年. 市川英雄著『糸満漁業の展開構造―沖縄・奄美を中心として―』,沖縄タイムス社,2009年. 執筆者 福永 耕大
サンゴの海の漁業
はじめに、沖縄の台所 那覇市国際通りのすぐ近く、第一牧志公設市場は1950年から続く「沖縄の台所」として知られています(牧志公設市場HP:https://kosetsu-ichiba.com/)。市場には県産の野菜やお肉などがずらりと並べられ、店員さんの威勢のよい声が響いています。そんな中、ひときわ惹きつけられるのは何といっても色鮮やかな魚介類!!高級魚のアカジンや、ブダイの仲間のイラブチャをはじめとする亜熱帯の魚は見ているだけでもワクワクしてしまいます。皆さんはこのような魚たちがどのようにして獲られたのかご存知でしょうか?そこで、今回のニュースレターでは沖縄の漁業についてご紹介します。
写真1 市場に並ぶ魚たち(牧志公設市場HPより)
海人の村、糸満 沖縄では漁業者の総称として海人(ウミンチュ)と呼びます。沖縄県の南部に位置する糸満市は古くから漁業が盛んな地域であり、古くから海人の代名詞として糸満人(イチマナー)という言葉が使われるほどです。そこで今回は糸満市の漁業を例に、歴史的背景とそのユニークな漁業方法の発展について見ていきましょう。琉球王国時代(1429年-1879年)、県の南部には中国・東南アジア・朝鮮・日本など東アジア一帯との商いを担う貿易港があったといわれています。糸満の漁民はその主要貿易品のひとつであった螺鈿細工の原料となる貝殻や、中華料理に使われるナマコなどの海産物を生産する琉球王国にとって重要な役割を担っていました。琉球王国時代の末期では、糸満は那覇や首里に次ぐ一大集落であったといわれています。 サンゴの海の漁業 明治時代に入り政府によって琉球王国が廃止され、沖縄県が設置されました(1872年―1879年)。その後、欧米における貝ボタンの原料の需要が高まり、糸満漁民は貝類の生産に力を入れていきました。素潜りを裸眼ですると目がただれたり、かすんだりすることが多く、獲物も手探りでとる状態だったといいます。そんな中、1884年に水中眼鏡(ミーカガン)が考案されました。透明度が高い沖縄の海においてミーカガンは非常に有効な発明であり、貝類の漁獲効率を飛躍的に向上させました。
写真2 サバニ(漁師の舟)とミーカガン(沖縄県立博物館所蔵)
 1890年代には大型の追い込み網(廻高網:アギヤー)が登場しました。複雑なサンゴ礁が発達した沖縄の海で、サンゴ礁に生息する魚を大量に捕獲することは簡単ではありません。無数の隠れ家を持つ彼らを捉える最も効果的な方法が追い込み網漁法です。このように網を用いた漁法は本州にも存在します。しかし、興味深いことに、網の使い方が本州と沖縄では全く異なるのです。底引き網漁法は本州でみられる網漁法のひとつであり、網を引き回すことで獲物を捕ります。それに対して、沖縄の追い込み網法では、網を設置して、逆に漁師らが礁に隠れている魚を驚かして追い出し、網に追い込んで獲物を捕ります。底引き網漁法とは対照的に、追い込み網漁法はまるで陸上の狩りのような漁法であり、温暖な水温や高い透明度を持つ沖縄の海を基盤にして作られたことが分かります。
アギヤーの仕組みと使い方 (資料) 中楯興編著『日本における海洋民の総合研究―糸満系漁民を中心として―』上巻(1987年),65頁. 沖縄大百科事典刊行事務局編『沖縄大百科事典』上巻(1983年),37頁.  2016年の3月に宮古島で撮影された追い込み網漁の映像が公開されていましたので、下記にリンクを載せておきます。この映像ではボンベを背負った海人が魚をアギヤーに追い込むシーンが記録されています。 【アギヤー漁 沖縄の伝統漁師 宮古島市佐良浜】 https://youtu.be/7o6BcPKvg7g?t=10m37s さいごに これまで見てきたように、沖縄には本州ではみられないようなユニークな漁法があり、それはサンゴの海に適応していることが分かります。このことは漁業に限ったことではなく、人の暮らしすべてにおいて同様です。沖縄というとサンゴの海や亜熱帯の植物などが注目されますが、自然環境や東アジア諸国文化から影響を受けたユニークな民俗文化を感じることも粋な沖縄の楽しみのひとつになる。このような事を今回のニュースレターを通して提案できたかと思います。読者の皆さんもぜひ、試してみてください!! 参考文献 沖縄大百科事典刊行事務局編『沖縄大百科事典』上巻,沖縄タイムス社,1983年. 中楯興編著『日本における海洋民の総合研究―糸満系漁民を中心として―』上巻,九州大学出版会,1987年. 糸満市史編集委員会編『糸満市史』資料編12 民俗資料,糸満市役所,1991年. 市川英雄著『糸満漁業の展開構造―沖縄・奄美を中心として―』,沖縄タイムス社,2009年. 執筆者 福永 耕大
サンゴの海の漁業
はじめに、沖縄の台所 那覇市国際通りのすぐ近く、第一牧志公設市場は1950年から続く「沖縄の台所」として知られています(牧志公設市場HP:https://kosetsu-ichiba.com/)。市場には県産の野菜やお肉などがずらりと並べられ、店員さんの威勢のよい声が響いています。そんな中、ひときわ惹きつけられるのは何といっても色鮮やかな魚介類!!高級魚のアカジンや、ブダイの仲間のイラブチャをはじめとする亜熱帯の魚は見ているだけでもワクワクしてしまいます。皆さんはこのような魚たちがどのようにして獲られたのかご存知でしょうか?そこで、今回のニュースレターでは沖縄の漁業についてご紹介します。
写真1 市場に並ぶ魚たち(牧志公設市場HPより)
海人の村、糸満 沖縄では漁業者の総称として海人(ウミンチュ)と呼びます。沖縄県の南部に位置する糸満市は古くから漁業が盛んな地域であり、古くから海人の代名詞として糸満人(イチマナー)という言葉が使われるほどです。そこで今回は糸満市の漁業を例に、歴史的背景とそのユニークな漁業方法の発展について見ていきましょう。琉球王国時代(1429年-1879年)、県の南部には中国・東南アジア・朝鮮・日本など東アジア一帯との商いを担う貿易港があったといわれています。糸満の漁民はその主要貿易品のひとつであった螺鈿細工の原料となる貝殻や、中華料理に使われるナマコなどの海産物を生産する琉球王国にとって重要な役割を担っていました。琉球王国時代の末期では、糸満は那覇や首里に次ぐ一大集落であったといわれています。 サンゴの海の漁業 明治時代に入り政府によって琉球王国が廃止され、沖縄県が設置されました(1872年―1879年)。その後、欧米における貝ボタンの原料の需要が高まり、糸満漁民は貝類の生産に力を入れていきました。素潜りを裸眼ですると目がただれたり、かすんだりすることが多く、獲物も手探りでとる状態だったといいます。そんな中、1884年に水中眼鏡(ミーカガン)が考案されました。透明度が高い沖縄の海においてミーカガンは非常に有効な発明であり、貝類の漁獲効率を飛躍的に向上させました。
写真2 サバニ(漁師の舟)とミーカガン(沖縄県立博物館所蔵)
 1890年代には大型の追い込み網(廻高網:アギヤー)が登場しました。複雑なサンゴ礁が発達した沖縄の海で、サンゴ礁に生息する魚を大量に捕獲することは簡単ではありません。無数の隠れ家を持つ彼らを捉える最も効果的な方法が追い込み網漁法です。このように網を用いた漁法は本州にも存在します。しかし、興味深いことに、網の使い方が本州と沖縄では全く異なるのです。底引き網漁法は本州でみられる網漁法のひとつであり、網を引き回すことで獲物を捕ります。それに対して、沖縄の追い込み網法では、網を設置して、逆に漁師らが礁に隠れている魚を驚かして追い出し、網に追い込んで獲物を捕ります。底引き網漁法とは対照的に、追い込み網漁法はまるで陸上の狩りのような漁法であり、温暖な水温や高い透明度を持つ沖縄の海を基盤にして作られたことが分かります。
アギヤーの仕組みと使い方 (資料) 中楯興編著『日本における海洋民の総合研究―糸満系漁民を中心として―』上巻(1987年),65頁. 沖縄大百科事典刊行事務局編『沖縄大百科事典』上巻(1983年),37頁.  2016年の3月に宮古島で撮影された追い込み網漁の映像が公開されていましたので、下記にリンクを載せておきます。この映像ではボンベを背負った海人が魚をアギヤーに追い込むシーンが記録されています。 【アギヤー漁 沖縄の伝統漁師 宮古島市佐良浜】 https://youtu.be/7o6BcPKvg7g?t=10m37s さいごに これまで見てきたように、沖縄には本州ではみられないようなユニークな漁法があり、それはサンゴの海に適応していることが分かります。このことは漁業に限ったことではなく、人の暮らしすべてにおいて同様です。沖縄というとサンゴの海や亜熱帯の植物などが注目されますが、自然環境や東アジア諸国文化から影響を受けたユニークな民俗文化を感じることも粋な沖縄の楽しみのひとつになる。このような事を今回のニュースレターを通して提案できたかと思います。読者の皆さんもぜひ、試してみてください!! 参考文献 沖縄大百科事典刊行事務局編『沖縄大百科事典』上巻,沖縄タイムス社,1983年. 中楯興編著『日本における海洋民の総合研究―糸満系漁民を中心として―』上巻,九州大学出版会,1987年. 糸満市史編集委員会編『糸満市史』資料編12 民俗資料,糸満市役所,1991年. 市川英雄著『糸満漁業の展開構造―沖縄・奄美を中心として―』,沖縄タイムス社,2009年. 執筆者 福永 耕大
サンゴの海の漁業
はじめに、沖縄の台所 那覇市国際通りのすぐ近く、第一牧志公設市場は1950年から続く「沖縄の台所」として知られています(牧志公設市場HP:https://kosetsu-ichiba.com/)。市場には県産の野菜やお肉などがずらりと並べられ、店員さんの威勢のよい声が響いています。そんな中、ひときわ惹きつけられるのは何といっても色鮮やかな魚介類!!高級魚のアカジンや、ブダイの仲間のイラブチャをはじめとする亜熱帯の魚は見ているだけでもワクワクしてしまいます。皆さんはこのような魚たちがどのようにして獲られたのかご存知でしょうか?そこで、今回のニュースレターでは沖縄の漁業についてご紹介します。
写真1 市場に並ぶ魚たち(牧志公設市場HPより)
海人の村、糸満 沖縄では漁業者の総称として海人(ウミンチュ)と呼びます。沖縄県の南部に位置する糸満市は古くから漁業が盛んな地域であり、古くから海人の代名詞として糸満人(イチマナー)という言葉が使われるほどです。そこで今回は糸満市の漁業を例に、歴史的背景とそのユニークな漁業方法の発展について見ていきましょう。琉球王国時代(1429年-1879年)、県の南部には中国・東南アジア・朝鮮・日本など東アジア一帯との商いを担う貿易港があったといわれています。糸満の漁民はその主要貿易品のひとつであった螺鈿細工の原料となる貝殻や、中華料理に使われるナマコなどの海産物を生産する琉球王国にとって重要な役割を担っていました。琉球王国時代の末期では、糸満は那覇や首里に次ぐ一大集落であったといわれています。 サンゴの海の漁業 明治時代に入り政府によって琉球王国が廃止され、沖縄県が設置されました(1872年―1879年)。その後、欧米における貝ボタンの原料の需要が高まり、糸満漁民は貝類の生産に力を入れていきました。素潜りを裸眼ですると目がただれたり、かすんだりすることが多く、獲物も手探りでとる状態だったといいます。そんな中、1884年に水中眼鏡(ミーカガン)が考案されました。透明度が高い沖縄の海においてミーカガンは非常に有効な発明であり、貝類の漁獲効率を飛躍的に向上させました。
写真2 サバニ(漁師の舟)とミーカガン(沖縄県立博物館所蔵)
 1890年代には大型の追い込み網(廻高網:アギヤー)が登場しました。複雑なサンゴ礁が発達した沖縄の海で、サンゴ礁に生息する魚を大量に捕獲することは簡単ではありません。無数の隠れ家を持つ彼らを捉える最も効果的な方法が追い込み網漁法です。このように網を用いた漁法は本州にも存在します。しかし、興味深いことに、網の使い方が本州と沖縄では全く異なるのです。底引き網漁法は本州でみられる網漁法のひとつであり、網を引き回すことで獲物を捕ります。それに対して、沖縄の追い込み網法では、網を設置して、逆に漁師らが礁に隠れている魚を驚かして追い出し、網に追い込んで獲物を捕ります。底引き網漁法とは対照的に、追い込み網漁法はまるで陸上の狩りのような漁法であり、温暖な水温や高い透明度を持つ沖縄の海を基盤にして作られたことが分かります。
アギヤーの仕組みと使い方 (資料) 中楯興編著『日本における海洋民の総合研究―糸満系漁民を中心として―』上巻(1987年),65頁. 沖縄大百科事典刊行事務局編『沖縄大百科事典』上巻(1983年),37頁.  2016年の3月に宮古島で撮影された追い込み網漁の映像が公開されていましたので、下記にリンクを載せておきます。この映像ではボンベを背負った海人が魚をアギヤーに追い込むシーンが記録されています。 【アギヤー漁 沖縄の伝統漁師 宮古島市佐良浜】 https://youtu.be/7o6BcPKvg7g?t=10m37s さいごに これまで見てきたように、沖縄には本州ではみられないようなユニークな漁法があり、それはサンゴの海に適応していることが分かります。このことは漁業に限ったことではなく、人の暮らしすべてにおいて同様です。沖縄というとサンゴの海や亜熱帯の植物などが注目されますが、自然環境や東アジア諸国文化から影響を受けたユニークな民俗文化を感じることも粋な沖縄の楽しみのひとつになる。このような事を今回のニュースレターを通して提案できたかと思います。読者の皆さんもぜひ、試してみてください!! 参考文献 沖縄大百科事典刊行事務局編『沖縄大百科事典』上巻,沖縄タイムス社,1983年. 中楯興編著『日本における海洋民の総合研究―糸満系漁民を中心として―』上巻,九州大学出版会,1987年. 糸満市史編集委員会編『糸満市史』資料編12 民俗資料,糸満市役所,1991年. 市川英雄著『糸満漁業の展開構造―沖縄・奄美を中心として―』,沖縄タイムス社,2009年. 執筆者 福永 耕大
サンゴの海の漁業
はじめに、沖縄の台所 那覇市国際通りのすぐ近く、第一牧志公設市場は1950年から続く「沖縄の台所」として知られています(牧志公設市場HP:https://kosetsu-ichiba.com/)。市場には県産の野菜やお肉などがずらりと並べられ、店員さんの威勢のよい声が響いています。そんな中、ひときわ惹きつけられるのは何といっても色鮮やかな魚介類!!高級魚のアカジンや、ブダイの仲間のイラブチャをはじめとする亜熱帯の魚は見ているだけでもワクワクしてしまいます。皆さんはこのような魚たちがどのようにして獲られたのかご存知でしょうか?そこで、今回のニュースレターでは沖縄の漁業についてご紹介します。
写真1 市場に並ぶ魚たち(牧志公設市場HPより)
海人の村、糸満 沖縄では漁業者の総称として海人(ウミンチュ)と呼びます。沖縄県の南部に位置する糸満市は古くから漁業が盛んな地域であり、古くから海人の代名詞として糸満人(イチマナー)という言葉が使われるほどです。そこで今回は糸満市の漁業を例に、歴史的背景とそのユニークな漁業方法の発展について見ていきましょう。琉球王国時代(1429年-1879年)、県の南部には中国・東南アジア・朝鮮・日本など東アジア一帯との商いを担う貿易港があったといわれています。糸満の漁民はその主要貿易品のひとつであった螺鈿細工の原料となる貝殻や、中華料理に使われるナマコなどの海産物を生産する琉球王国にとって重要な役割を担っていました。琉球王国時代の末期では、糸満は那覇や首里に次ぐ一大集落であったといわれています。 サンゴの海の漁業 明治時代に入り政府によって琉球王国が廃止され、沖縄県が設置されました(1872年―1879年)。その後、欧米における貝ボタンの原料の需要が高まり、糸満漁民は貝類の生産に力を入れていきました。素潜りを裸眼ですると目がただれたり、かすんだりすることが多く、獲物も手探りでとる状態だったといいます。そんな中、1884年に水中眼鏡(ミーカガン)が考案されました。透明度が高い沖縄の海においてミーカガンは非常に有効な発明であり、貝類の漁獲効率を飛躍的に向上させました。
写真2 サバニ(漁師の舟)とミーカガン(沖縄県立博物館所蔵)
 1890年代には大型の追い込み網(廻高網:アギヤー)が登場しました。複雑なサンゴ礁が発達した沖縄の海で、サンゴ礁に生息する魚を大量に捕獲することは簡単ではありません。無数の隠れ家を持つ彼らを捉える最も効果的な方法が追い込み網漁法です。このように網を用いた漁法は本州にも存在します。しかし、興味深いことに、網の使い方が本州と沖縄では全く異なるのです。底引き網漁法は本州でみられる網漁法のひとつであり、網を引き回すことで獲物を捕ります。それに対して、沖縄の追い込み網法では、網を設置して、逆に漁師らが礁に隠れている魚を驚かして追い出し、網に追い込んで獲物を捕ります。底引き網漁法とは対照的に、追い込み網漁法はまるで陸上の狩りのような漁法であり、温暖な水温や高い透明度を持つ沖縄の海を基盤にして作られたことが分かります。
アギヤーの仕組みと使い方 (資料) 中楯興編著『日本における海洋民の総合研究―糸満系漁民を中心として―』上巻(1987年),65頁. 沖縄大百科事典刊行事務局編『沖縄大百科事典』上巻(1983年),37頁.  2016年の3月に宮古島で撮影された追い込み網漁の映像が公開されていましたので、下記にリンクを載せておきます。この映像ではボンベを背負った海人が魚をアギヤーに追い込むシーンが記録されています。 【アギヤー漁 沖縄の伝統漁師 宮古島市佐良浜】 https://youtu.be/7o6BcPKvg7g?t=10m37s さいごに これまで見てきたように、沖縄には本州ではみられないようなユニークな漁法があり、それはサンゴの海に適応していることが分かります。このことは漁業に限ったことではなく、人の暮らしすべてにおいて同様です。沖縄というとサンゴの海や亜熱帯の植物などが注目されますが、自然環境や東アジア諸国文化から影響を受けたユニークな民俗文化を感じることも粋な沖縄の楽しみのひとつになる。このような事を今回のニュースレターを通して提案できたかと思います。読者の皆さんもぜひ、試してみてください!! 参考文献 沖縄大百科事典刊行事務局編『沖縄大百科事典』上巻,沖縄タイムス社,1983年. 中楯興編著『日本における海洋民の総合研究―糸満系漁民を中心として―』上巻,九州大学出版会,1987年. 糸満市史編集委員会編『糸満市史』資料編12 民俗資料,糸満市役所,1991年. 市川英雄著『糸満漁業の展開構造―沖縄・奄美を中心として―』,沖縄タイムス社,2009年. 執筆者 福永 耕大