ニュースレター「サンゴ礁の自然環境」

2016年7月号

International Coral Reef Symposium 2016 in Hawaii

-国際サンゴ礁学会ハワイ大会- 体験記

 今月のニュースレターは、ハワイのオアフ島で先月下旬に開催された「第13回国際サンゴ礁学会ハワイ大会」の様子をお届けします。 日本のサンゴ礁研究における中心"日本サンゴ礁学会" 日本で行われているサンゴ礁研究には、どのような分野がありどのような研究者が従事しているのかご存知でしょうか? 一口にサンゴ礁研究といっても、サンゴや熱帯魚といったサンゴ礁に暮らす生き物の研究(生物学)、サンゴ礁の生物から得られる化学物質の研究(化学)、死んだサンゴの骨格が堆積して形成されるサンゴ「礁」の地質に関する研究(地学)、世界の北限に位置する日本のサンゴ礁を支える温暖な海流の研究(海洋学)、沿岸開発などで衰退する日本のサンゴ礁を守るための研究(保全学)、サンゴ礁の経済価値や人との関わりについての社会学的研究(人文科学)など、そこには実に様々な研究テーマがあります。そのため、これらを研究する研究機関も多岐にわたり、国立大学では、東京大学、東北大学、東京工業大学、静岡大学、宮崎大学、そして私が所属する琉球大学などで多くの研究者が従事しています。大学以外では、国立環境研究所、黒潮生物圏研究センター、日本自然保護協会、美ら島財団、環境アセスメント会社などで盛んに研究が行われています。このような研究機関に在籍する研究者たち約600名が、年に1回開催される「日本サンゴ礁学会(JCRS)」という学会でその研究成果を報告し、互いに知識を深め合っています。 サンゴ礁研究者にとって 4年に1度のオリンピック"国際サンゴ礁学会" それでは世界のサンゴ礁研究についてはどうでしょうか? 日本と同じように、国内に「サンゴ礁学会」をもつ国としては、世界最大のサンゴ礁 “グレートバリアリーフ” を有するオーストラリア(ACRS)や、大西洋に面し日本とは大きく異なるサンゴ礁生態系がみられるメキシコ(SOMAC)などが挙げられます。あるいは、アジア太平洋サンゴ礁学会(APCRS)のように、サンゴ礁生態系をもつアジア諸国が集まって「サンゴ礁学会」を開催することもあります。このように、国内または近隣諸国の研究者同士で集まることは比較的たやすいのですが、遠く離れた地域ではそうはいきません。他の島々と隔絶した海洋島のサンゴ礁を研究するハワイ大学や、近年大規模な予算をかけた研究が始まり注目を浴びている中東のサウジアラビア、カリブ海や大西洋で活躍する中南米の研究者たちと顔を突き合わせて意見を交換する機会はなかなかありません。さらに、世界屈指の自然史博物館であるオランダのNaturalisに所属する研究者たちと交流する機会も滅多にありません。それらのサンゴ礁に関する世界中の研究者が一堂に会する貴重な機会が、4年に1度開催される「国際サンゴ礁学会(ICRS)」です。まさしく“サンゴ礁のオリンピック”と呼ぶにふさわしいイベントなのです。 第13回国際サンゴ礁学会ハワイ大会 今年の国際サンゴ礁学会は、2016年6月19日〜24日にアメリカ合衆国ハワイ州ホノルルのハワイ国際会議場で開催されました(写真1)。会場は全面ガラス張りの美しい建物で、1階ホールには受付とハワイが誇る世界最大の海洋保護区であるパパハナウモクアケア海洋国家遺産(Papahānaumokuākea Marine National Monument)に生息する海洋生物を紹介する写真展があり、ポスター発表兼昼食や休憩をとる大きな会場がありました(写真2)。2階には大小およそ30の部屋があり、全88テーマの口頭発表が行われました。3階には初日にウェルカムパーティが行われたテラスと、招待講演や総会、最終日前夜のパーティなどが行われた広い会議場がありました。 今回の学会は、総合テーマに “Bridging Science to Policy(科学と政策の架け橋に)” を掲げただけあって、開会セレモニーではパラオ共和国大統領によるパラオの海洋保全政策についての基調講演があり、全88セッションのうち約半数は各国がこれまでに取り組んできた保全策の評価、これからの保全のあり方などに関するものでした。残り半数のうち1/3はサンゴ礁が直面する危機に関するもので、地球温暖化や海洋酸性化、海面上昇など地球規模の大きなテーマから、沿岸開発、化学汚染、環境指標などより小さな地域規模でのテーマまで幅広くみられました。したがって、全体の2/3のセッションがサンゴ礁における危機的状況とそれに対する世界の取り組みに関係しており、世界中の研究者や政府、環境保護団体などが、いかにサンゴ礁を取り巻く現況を憂慮しているかが伺えます。もちろん残る1/3のセッションは “純粋な” サイエンス、つまり前節に取り上げたようなサンゴ礁生物に関する生物学、化学、地学などでした。そういう私も、沿岸に生息する貝類相を調べることで、「沖縄島の沿岸が過去40年間でどのように変化したか」を考察した研究報告をしたので、発表したセッションはどちらかと言えば前者側でした 。 国際サンゴ礁学会の公式発表によれば、この6日間に約2500人の参加者が世界各国から集まり、議論と交流が行われました。

ニュースレター一覧

2014年8月号

生き物と生き物とのつながりをみてみると

2014年9月号

多くの生き物たちの命をささえる藻場

2014年10月号

サンゴを彩る蛍光タンパク質の役割

2014年11月号

スナギンチャクの繁殖

2015年1月号

沖縄の潮間帯40年の変化

2015年2月号

干潟を集団行進する多脚型ボット…ではなくカニ

2015年3月号

沖縄の生活に根付く海藻

2015年4月号

カーミージーの海と浦添の人々

2015年6月号

月夜に始まるサンゴの産卵とその研究

2015年7月号

新種の生物を自分で発見して名前をつけるには?

2015年8月号

スツボサンゴはどこへ行く?

2015年9月号

貝殻にまん丸の穴を開けたのは誰?

2015年10月号

電灯潜り漁の世界

2015年11月号

フジツボに魅せられて脚まねきが誘うフジツボの世界

2015年12月号

沖縄のカブトガニは夢か幻か

2016年2月号

沖縄の海への憧れから研究へ

2016年3月号

子供から学ぶハマダイコンの事実

2016年4月号

こどもたちに大人気のクワガタムシ!じゃあ、海のクワガタムシは?

2016年5月号

これであなたも魚通!?~方言から迫る沖縄の食用魚~

2016年6月号

タカラガイの世界

2016年7月号

-国際サンゴ礁学会ハワイ大会-体験記

2016年9月号

サンゴの運命は如何に!?

2016年10月号

海面に雪だるま!?

~ウミショウブの雄花~

2017年4月号

春の代名詞を知る

~沖縄と本土の桜の違いとは?~

2017年5月号

沖縄の熱いビール文化

~知られざるサンゴとビールの関係~

2017年6月号

月を感じる沖縄の生き物

2017年7月号

夜の海の派手な世界

2017年8月号

沖縄の海の現在と未来

2017年9月号

サンゴの一斉産卵から見る環境の変化

写真1 ハワイ国際会議場
写真2 写真展“Archipelago” 私の学会発表と印象に残った発表 私が参加したセッションは、「Coastal pollution: nutrients, sewage and contaminants(沿岸域の汚染:栄養塩類、汚水、不純物)」で、「40 YEARS OF ENVIRONMENTAL DISTURBANCES AND MOLLUSK COMMUNITIES IN THE INTERTIDAL ZONE OF OKINAWA ISLAND, JAPAN.(沖縄の潮間帯における40年間におよぶ環境攪乱と貝類群集)」という演題でポスター発表を行いました(写真3)。ポスターの印刷はホノルル入りしてから会場の近くにある印刷業者で行い、発表にいたるまでが非常にぎりぎりとなってしまいましたが、何とか無事に発表に臨むことができました。大会初日のセッションだったせい?か、発表を見に来た研究者の数は好調とは言えませんでしたが、海外の研究者の方々に自身の研究成果を見て頂き、解析手法や今後の方向性についてのアドバイスを得ることができました(写真4)。発表内容については、こちらのニュースレターでまた紹介させて頂く機会があればと思いますが、簡単に言うと、40年前の沖縄本島沿岸でみられた貝類群集と2015年の沖縄本島沿岸でみられた貝類群集とでは貝類の種の構成が違っていて、これが人為的な影響かどうかを検証するためにはさらなる調査が必要である、という内容でした。 自身の発表をなんとか終え、残る5日間は気になる研究発表を聞いて回っていたわけですが、その中からサンゴ礁の起源に関するいくつかの研究をご紹介したいと思います。 現在の地球上でサンゴ礁における生物多様性の中心(生物の種類が最も多くその質も多様な場所)は、サンゴ類と魚類の分布から、フィリピン、インドネシア、パプアニューギニアを三角形に囲ったコーラルトライアングルと呼ばれる海域であると考えられています。今大会でのハワイ大のグループによる発表では、世界中のサンゴの化石記録を収集し、年代と地域を調査したところ、昔のサンゴ類の中心は今とは全く違う場所にあったようです。サンゴ化石は約6000万年前にテーチス海(現在のヨーロッパ、地中海周辺)で産出し、約2800万年前まではその海域で最も多様性が高く、約2100万年前から600万年前にかけてインド洋を経て太平洋に多様性の中心が移り、現在のコーラルトライアングルの多様性が最も高くなったのは約300万年前からである、という内容でした。さらにシンガポール大のグループによる発表では、近年蓄積されてきたサンゴの分子データを用いて、現生サンゴ類の進化の起源がどこにあるのかを調査したそうです。すると、推定された共通の祖先種は光合成を行わないサンゴ類であり、そこから光合成を行うサンゴ類が出現し、現在のサンゴ礁を形成するサンゴ類が飛躍的に多様化したという解釈になるようです。ハワイ大のグループの発表と合わせて考えてみると、かつてのテーチス海で生まれたサンゴ類ははじめ光合成を行っておらず、数千万年の時をかけて現在のコーラルトライアングルへと多様性の中心が移ってくる過程で、光合成を行って骨格を形成するサンゴ類が出現し、現在のサンゴ礁が形成されていったとう解釈になります。 現在のサンゴ類・サンゴ礁の姿がどのようにして成立したのかという点で非常に興味深く、どちらも論文として出版されるのが楽しみです。
写真3 私の国際サンゴ礁学会発表
写真4 ポスター発表会場の様子 ハワイ観光と次の開催地について このような調子で6日間の学会もあっという間に過ぎていき、5日目の夜は“Banquet”と呼ばれるパーティが開かれました。3階の一番大きなホールに円卓が敷き詰められ、食事と飲み物が用意され、いろいろなグループが入り乱れて談笑を交わしました。ここでも、セッション中に聞きそびれてしまった質問をしたり、共同研究の打ち合わせをしたり、先輩研究者から耳の痛いアドバイスを受けたり、と最後までアカデミックな雰囲気を楽しみました。ホールに用意されたステージ上では、アカペラのコーラスグループやギターの弾き語りなどが場を盛り上げてくれましたが、誰もが期待していたフラダンスが登場しなかったのには少し残念でした(写真5)。フラダンスが本当に登場しないことを確認して、私たちのグループはワイキキの市街にあるバーへと場所を替え、かつて私たちの研究室に滞在していた、アメリカ、スペイン、パラオ、コロンビア、フランス、オーストラリア、オランダ、台湾などの外国人研究者たちと飲み直しました。 6日目の最終日にもいくらか興味のある発表はあったのですが、前日に飲み過ぎたせいもあり、昼頃に目を覚ませてからあとは観光に赴きました。せっかくハワイまで来たのだからと、ひとまずワイキキビーチに向かい、その先にある世界最古というワイキキ水族館を見学し、有名なビショップ博物館にも行きたかったのですが、こちらは思いのほか離れていて閉館時刻も早かったために、途中のアラモアナショッピングセンターで土産物を物色しました(写真6)。 今回の “Banquet” ではフラダンスが登場しなかった以外にも、もう一つ不思議なことがありました。通常であれば、最後の晩餐会中に次回4年後の国際サンゴ礁学会の開催地が発表されるのですが、今回はそれがなかったのです。どうやら大会期間中に結論が出せなかったようなのですが、今のところ日本も候補に挙がっているとのことです。日本でサンゴ礁と言えばもちろん沖縄ですが、実は沖縄では2004年に既に国際サンゴ礁学会が開催されているので、もし次のオリンピックイヤーに日本で開催されるとすれば、関東周辺もしくは九州が有力との見方です。もしかしたら、4年後の2020年にはみなさんの街の周辺で国際サンゴ礁学会が開催されているかもしれません。その時には是非、会場まで足をお運びになって、世界のサンゴ礁研究の最前線を直に感じてみてください(参加費を払えばどなたでも聴講が可能です)。私も4年後には、学生ではなく、博士として会場に立てるよう、これからの研究生活に邁進したいと思います。
写真5 Banquet晩餐会の様子
写真6 ワイキキビーチ  以上、国際サンゴ礁学会ハワイ大会体験記でした。 執筆者 水山 克
 今月のニュースレターは、ハワイのオアフ島で先月下旬に開催された「第13回国際サンゴ礁学会ハワイ大会」の様子をお届けします。 日本のサンゴ礁研究における中心"日本サンゴ礁学会" 日本で行われているサンゴ礁研究には、どのような分野がありどのような研究者が従事しているのかご存知でしょうか? 一口にサンゴ礁研究といっても、サンゴや熱帯魚といったサンゴ礁に暮らす生き物の研究(生物学)、サンゴ礁の生物から得られる化学物質の研究(化学)、死んだサンゴの骨格が堆積して形成されるサンゴ「礁」の地質に関する研究(地学)、世界の北限に位置する日本のサンゴ礁を支える温暖な海流の研究(海洋学)、沿岸開発などで衰退する日本のサンゴ礁を守るための研究(保全学)、サンゴ礁の経済価値や人との関わりについての社会学的研究(人文科学)など、そこには実に様々な研究テーマがあります。そのため、これらを研究する研究機関も多岐にわたり、国立大学では、東京大学、東北大学、東京工業大学、静岡大学、宮崎大学、そして私が所属する琉球大学などで多くの研究者が従事しています。大学以外では、国立環境研究所、黒潮生物圏研究センター、日本自然保護協会、美ら島財団、環境アセスメント会社などで盛んに研究が行われています。このような研究機関に在籍する研究者たち約600名が、年に1回開催される「日本サンゴ礁学会(JCRS)」という学会でその研究成果を報告し、互いに知識を深め合っています。 サンゴ礁研究者にとって 4年に1度のオリンピック"国際サンゴ礁学会" それでは世界のサンゴ礁研究についてはどうでしょうか? 日本と同じように、国内に「サンゴ礁学会」をもつ国としては、世界最大のサンゴ礁 “グレートバリアリーフ” を有するオーストラリア(ACRS)や、大西洋に面し日本とは大きく異なるサンゴ礁生態系がみられるメキシコ(SOMAC)などが挙げられます。あるいは、アジア太平洋サンゴ礁学会(APCRS)のように、サンゴ礁生態系をもつアジア諸国が集まって「サンゴ礁学会」を開催することもあります。このように、国内または近隣諸国の研究者同士で集まることは比較的たやすいのですが、遠く離れた地域ではそうはいきません。他の島々と隔絶した海洋島のサンゴ礁を研究するハワイ大学や、近年大規模な予算をかけた研究が始まり注目を浴びている中東のサウジアラビア、カリブ海や大西洋で活躍する中南米の研究者たちと顔を突き合わせて意見を交換する機会はなかなかありません。さらに、世界屈指の自然史博物館であるオランダのNaturalisに所属する研究者たちと交流する機会も滅多にありません。それらのサンゴ礁に関する世界中の研究者が一堂に会する貴重な機会が、4年に1度開催される「国際サンゴ礁学会(ICRS)」です。まさしく“サンゴ礁のオリンピック”と呼ぶにふさわしいイベントなのです。 第13回国際サンゴ礁学会ハワイ大会 今年の国際サンゴ礁学会は、2016年6月19日〜24日にアメリカ合衆国ハワイ州ホノルルのハワイ国際会議場で開催されました(写真1)。会場は全面ガラス張りの美しい建物で、1階ホールには受付とハワイが誇る世界最大の海洋保護区であるパパハナウモクアケア海洋国家遺産(Papahānaumokuākea Marine National Monument)に生息する海洋生物を紹介する写真展があり、ポスター発表兼昼食や休憩をとる大きな会場がありました(写真2)。2階には大小およそ30の部屋があり、全88テーマの口頭発表が行われました。3階には初日にウェルカムパーティが行われたテラスと、招待講演や総会、最終日前夜のパーティなどが行われた広い会議場がありました。 今回の学会は、総合テーマに “Bridging Science to Policy(科学と政策の架け橋に)” を掲げただけあって、開会セレモニーではパラオ共和国大統領によるパラオの海洋保全政策についての基調講演があり、全88セッションのうち約半数は各国がこれまでに取り組んできた保全策の評価、これからの保全のあり方などに関するものでした。残り半数のうち1/3はサンゴ礁が直面する危機に関するもので、地球温暖化や海洋酸性化、海面上昇など地球規模の大きなテーマから、沿岸開発、化学汚染、環境指標などより小さな地域規模でのテーマまで幅広くみられました。したがって、全体の2/3のセッションがサンゴ礁における危機的状況とそれに対する世界の取り組みに関係しており、世界中の研究者や政府、環境保護団体などが、いかにサンゴ礁を取り巻く現況を憂慮しているかが伺えます。もちろん残る1/3のセッションは “純粋な” サイエンス、つまり前節に取り上げたようなサンゴ礁生物に関する生物学、化学、地学などでした。そういう私も、沿岸に生息する貝類相を調べることで、「沖縄島の沿岸が過去40年間でどのように変化したか」を考察した研究報告をしたので、発表したセッションはどちらかと言えば前者側でした 。 国際サンゴ礁学会の公式発表によれば、この6日間に約2500人の参加者が世界各国から集まり、議論と交流が行われました。
写真1 ハワイ国際会議場
写真2 写真展“Archipelago” 私の学会発表と印象に残った発表 私が参加したセッションは、「Coastal pollution: nutrients, sewage and contaminants(沿岸域の汚染:栄養塩類、汚水、不純物)」で、「40 YEARS OF ENVIRONMENTAL DISTURBANCES AND MOLLUSK COMMUNITIES IN THE INTERTIDAL ZONE OF OKINAWA ISLAND, JAPAN.(沖縄の潮間帯における40年間におよぶ環境攪乱と貝類群集)」という演題でポスター発表を行いました(写真3)。ポスターの印刷はホノルル入りしてから会場の近くにある印刷業者で行い、発表にいたるまでが非常にぎりぎりとなってしまいましたが、何とか無事に発表に臨むことができました。大会初日のセッションだったせい?か、発表を見に来た研究者の数は好調とは言えませんでしたが、海外の研究者の方々に自身の研究成果を見て頂き、解析手法や今後の方向性についてのアドバイスを得ることができました(写真4)。発表内容については、こちらのニュースレターでまた紹介させて頂く機会があればと思いますが、簡単に言うと、40年前の沖縄本島沿岸でみられた貝類群集と2015年の沖縄本島沿岸でみられた貝類群集とでは貝類の種の構成が違っていて、これが人為的な影響かどうかを検証するためにはさらなる調査が必要である、という内容でした。 自身の発表をなんとか終え、残る5日間は気になる研究発表を聞いて回っていたわけですが、その中からサンゴ礁の起源に関するいくつかの研究をご紹介したいと思います。 現在の地球上でサンゴ礁における生物多様性の中心(生物の種類が最も多くその質も多様な場所)は、サンゴ類と魚類の分布から、フィリピン、インドネシア、パプアニューギニアを三角形に囲ったコーラルトライアングルと呼ばれる海域であると考えられています。今大会でのハワイ大のグループによる発表では、世界中のサンゴの化石記録を収集し、年代と地域を調査したところ、昔のサンゴ類の中心は今とは全く違う場所にあったようです。サンゴ化石は約6000万年前にテーチス海(現在のヨーロッパ、地中海周辺)で産出し、約2800万年前まではその海域で最も多様性が高く、約2100万年前から600万年前にかけてインド洋を経て太平洋に多様性の中心が移り、現在のコーラルトライアングルの多様性が最も高くなったのは約300万年前からである、という内容でした。さらにシンガポール大のグループによる発表では、近年蓄積されてきたサンゴの分子データを用いて、現生サンゴ類の進化の起源がどこにあるのかを調査したそうです。すると、推定された共通の祖先種は光合成を行わないサンゴ類であり、そこから光合成を行うサンゴ類が出現し、現在のサンゴ礁を形成するサンゴ類が飛躍的に多様化したという解釈になるようです。ハワイ大のグループの発表と合わせて考えてみると、かつてのテーチス海で生まれたサンゴ類ははじめ光合成を行っておらず、数千万年の時をかけて現在のコーラルトライアングルへと多様性の中心が移ってくる過程で、光合成を行って骨格を形成するサンゴ類が出現し、現在のサンゴ礁が形成されていったとう解釈になります。 現在のサンゴ類・サンゴ礁の姿がどのようにして成立したのかという点で非常に興味深く、どちらも論文として出版されるのが楽しみです。
写真3 私の国際サンゴ礁学会発表
写真4 ポスター発表会場の様子 ハワイ観光と次の開催地について このような調子で6日間の学会もあっという間に過ぎていき、5日目の夜は“Banquet”と呼ばれるパーティが開かれました。3階の一番大きなホールに円卓が敷き詰められ、食事と飲み物が用意され、いろいろなグループが入り乱れて談笑を交わしました。ここでも、セッション中に聞きそびれてしまった質問をしたり、共同研究の打ち合わせをしたり、先輩研究者から耳の痛いアドバイスを受けたり、と最後までアカデミックな雰囲気を楽しみました。ホールに用意されたステージ上では、アカペラのコーラスグループやギターの弾き語りなどが場を盛り上げてくれましたが、誰もが期待していたフラダンスが登場しなかったのには少し残念でした(写真5)。フラダンスが本当に登場しないことを確認して、私たちのグループはワイキキの市街にあるバーへと場所を替え、かつて私たちの研究室に滞在していた、アメリカ、スペイン、パラオ、コロンビア、フランス、オーストラリア、オランダ、台湾などの外国人研究者たちと飲み直しました。 6日目の最終日にもいくらか興味のある発表はあったのですが、前日に飲み過ぎたせいもあり、昼頃に目を覚ませてからあとは観光に赴きました。せっかくハワイまで来たのだからと、ひとまずワイキキビーチに向かい、その先にある世界最古というワイキキ水族館を見学し、有名なビショップ博物館にも行きたかったのですが、こちらは思いのほか離れていて閉館時刻も早かったために、途中のアラモアナショッピングセンターで土産物を物色しました(写真6)。 今回の “Banquet” ではフラダンスが登場しなかった以外にも、もう一つ不思議なことがありました。通常であれば、最後の晩餐会中に次回4年後の国際サンゴ礁学会の開催地が発表されるのですが、今回はそれがなかったのです。どうやら大会期間中に結論が出せなかったようなのですが、今のところ日本も候補に挙がっているとのことです。日本でサンゴ礁と言えばもちろん沖縄ですが、実は沖縄では2004年に既に国際サンゴ礁学会が開催されているので、もし次のオリンピックイヤーに日本で開催されるとすれば、関東周辺もしくは九州が有力との見方です。もしかしたら、4年後の2020年にはみなさんの街の周辺で国際サンゴ礁学会が開催されているかもしれません。その時には是非、会場まで足をお運びになって、世界のサンゴ礁研究の最前線を直に感じてみてください(参加費を払えばどなたでも聴講が可能です)。私も4年後には、学生ではなく、博士として会場に立てるよう、これからの研究生活に邁進したいと思います。
写真5 Banquet晩餐会の様子
写真6 ワイキキビーチ  以上、国際サンゴ礁学会ハワイ大会体験記でした。 執筆者 水山 克
 今月のニュースレターは、ハワイのオアフ島で先月下旬に開催された「第13回国際サンゴ礁学会ハワイ大会」の様子をお届けします。 日本のサンゴ礁研究における中心"日本サンゴ礁学会" 日本で行われているサンゴ礁研究には、どのような分野がありどのような研究者が従事しているのかご存知でしょうか? 一口にサンゴ礁研究といっても、サンゴや熱帯魚といったサンゴ礁に暮らす生き物の研究(生物学)、サンゴ礁の生物から得られる化学物質の研究(化学)、死んだサンゴの骨格が堆積して形成されるサンゴ「礁」の地質に関する研究(地学)、世界の北限に位置する日本のサンゴ礁を支える温暖な海流の研究(海洋学)、沿岸開発などで衰退する日本のサンゴ礁を守るための研究(保全学)、サンゴ礁の経済価値や人との関わりについての社会学的研究(人文科学)など、そこには実に様々な研究テーマがあります。そのため、これらを研究する研究機関も多岐にわたり、国立大学では、東京大学、東北大学、東京工業大学、静岡大学、宮崎大学、そして私が所属する琉球大学などで多くの研究者が従事しています。大学以外では、国立環境研究所、黒潮生物圏研究センター、日本自然保護協会、美ら島財団、環境アセスメント会社などで盛んに研究が行われています。このような研究機関に在籍する研究者たち約600名が、年に1回開催される「日本サンゴ礁学会(JCRS)」という学会でその研究成果を報告し、互いに知識を深め合っています。 サンゴ礁研究者にとって 4年に1度のオリンピック"国際サンゴ礁学会" それでは世界のサンゴ礁研究についてはどうでしょうか? 日本と同じように、国内に「サンゴ礁学会」をもつ国としては、世界最大のサンゴ礁 “グレートバリアリーフ” を有するオーストラリア(ACRS)や、大西洋に面し日本とは大きく異なるサンゴ礁生態系がみられるメキシコ(SOMAC)などが挙げられます。あるいは、アジア太平洋サンゴ礁学会(APCRS)のように、サンゴ礁生態系をもつアジア諸国が集まって「サンゴ礁学会」を開催することもあります。このように、国内または近隣諸国の研究者同士で集まることは比較的たやすいのですが、遠く離れた地域ではそうはいきません。他の島々と隔絶した海洋島のサンゴ礁を研究するハワイ大学や、近年大規模な予算をかけた研究が始まり注目を浴びている中東のサウジアラビア、カリブ海や大西洋で活躍する中南米の研究者たちと顔を突き合わせて意見を交換する機会はなかなかありません。さらに、世界屈指の自然史博物館であるオランダのNaturalisに所属する研究者たちと交流する機会も滅多にありません。それらのサンゴ礁に関する世界中の研究者が一堂に会する貴重な機会が、4年に1度開催される「国際サンゴ礁学会(ICRS)」です。まさしく“サンゴ礁のオリンピック”と呼ぶにふさわしいイベントなのです。 第13回国際サンゴ礁学会ハワイ大会 今年の国際サンゴ礁学会は、2016年6月19日〜24日にアメリカ合衆国ハワイ州ホノルルのハワイ国際会議場で開催されました(写真1)。会場は全面ガラス張りの美しい建物で、1階ホールには受付とハワイが誇る世界最大の海洋保護区であるパパハナウモクアケア海洋国家遺産(Papahānaumokuākea Marine National Monument)に生息する海洋生物を紹介する写真展があり、ポスター発表兼昼食や休憩をとる大きな会場がありました(写真2)。2階には大小およそ30の部屋があり、全88テーマの口頭発表が行われました。3階には初日にウェルカムパーティが行われたテラスと、招待講演や総会、最終日前夜のパーティなどが行われた広い会議場がありました。 今回の学会は、総合テーマに “Bridging Science to Policy(科学と政策の架け橋に)” を掲げただけあって、開会セレモニーではパラオ共和国大統領によるパラオの海洋保全政策についての基調講演があり、全88セッションのうち約半数は各国がこれまでに取り組んできた保全策の評価、これからの保全のあり方などに関するものでした。残り半数のうち1/3はサンゴ礁が直面する危機に関するもので、地球温暖化や海洋酸性化、海面上昇など地球規模の大きなテーマから、沿岸開発、化学汚染、環境指標などより小さな地域規模でのテーマまで幅広くみられました。したがって、全体の2/3のセッションがサンゴ礁における危機的状況とそれに対する世界の取り組みに関係しており、世界中の研究者や政府、環境保護団体などが、いかにサンゴ礁を取り巻く現況を憂慮しているかが伺えます。もちろん残る1/3のセッションは “純粋な” サイエンス、つまり前節に取り上げたようなサンゴ礁生物に関する生物学、化学、地学などでした。そういう私も、沿岸に生息する貝類相を調べることで、「沖縄島の沿岸が過去40年間でどのように変化したか」を考察した研究報告をしたので、発表したセッションはどちらかと言えば前者側でした 。 国際サンゴ礁学会の公式発表によれば、この6日間に約2500人の参加者が世界各国から集まり、議論と交流が行われました。
写真1 ハワイ国際会議場
写真2 写真展“Archipelago” 私の学会発表と印象に残った発表 私が参加したセッションは、「Coastal pollution: nutrients, sewage and contaminants(沿岸域の汚染:栄養塩類、汚水、不純物)」で、「40 YEARS OF ENVIRONMENTAL DISTURBANCES AND MOLLUSK COMMUNITIES IN THE INTERTIDAL ZONE OF OKINAWA ISLAND, JAPAN.(沖縄の潮間帯における40年間におよぶ環境攪乱と貝類群集)」という演題でポスター発表を行いました(写真3)。ポスターの印刷はホノルル入りしてから会場の近くにある印刷業者で行い、発表にいたるまでが非常にぎりぎりとなってしまいましたが、何とか無事に発表に臨むことができました。大会初日のセッションだったせい?か、発表を見に来た研究者の数は好調とは言えませんでしたが、海外の研究者の方々に自身の研究成果を見て頂き、解析手法や今後の方向性についてのアドバイスを得ることができました(写真4)。発表内容については、こちらのニュースレターでまた紹介させて頂く機会があればと思いますが、簡単に言うと、40年前の沖縄本島沿岸でみられた貝類群集と2015年の沖縄本島沿岸でみられた貝類群集とでは貝類の種の構成が違っていて、これが人為的な影響かどうかを検証するためにはさらなる調査が必要である、という内容でした。 自身の発表をなんとか終え、残る5日間は気になる研究発表を聞いて回っていたわけですが、その中からサンゴ礁の起源に関するいくつかの研究をご紹介したいと思います。 現在の地球上でサンゴ礁における生物多様性の中心(生物の種類が最も多くその質も多様な場所)は、サンゴ類と魚類の分布から、フィリピン、インドネシア、パプアニューギニアを三角形に囲ったコーラルトライアングルと呼ばれる海域であると考えられています。今大会でのハワイ大のグループによる発表では、世界中のサンゴの化石記録を収集し、年代と地域を調査したところ、昔のサンゴ類の中心は今とは全く違う場所にあったようです。サンゴ化石は約6000万年前にテーチス海(現在のヨーロッパ、地中海周辺)で産出し、約2800万年前まではその海域で最も多様性が高く、約2100万年前から600万年前にかけてインド洋を経て太平洋に多様性の中心が移り、現在のコーラルトライアングルの多様性が最も高くなったのは約300万年前からである、という内容でした。さらにシンガポール大のグループによる発表では、近年蓄積されてきたサンゴの分子データを用いて、現生サンゴ類の進化の起源がどこにあるのかを調査したそうです。すると、推定された共通の祖先種は光合成を行わないサンゴ類であり、そこから光合成を行うサンゴ類が出現し、現在のサンゴ礁を形成するサンゴ類が飛躍的に多様化したという解釈になるようです。ハワイ大のグループの発表と合わせて考えてみると、かつてのテーチス海で生まれたサンゴ類ははじめ光合成を行っておらず、数千万年の時をかけて現在のコーラルトライアングルへと多様性の中心が移ってくる過程で、光合成を行って骨格を形成するサンゴ類が出現し、現在のサンゴ礁が形成されていったとう解釈になります。 現在のサンゴ類・サンゴ礁の姿がどのようにして成立したのかという点で非常に興味深く、どちらも論文として出版されるのが楽しみです。
写真3 私の国際サンゴ礁学会発表
写真4 ポスター発表会場の様子 ハワイ観光と次の開催地について このような調子で6日間の学会もあっという間に過ぎていき、5日目の夜は“Banquet”と呼ばれるパーティが開かれました。3階の一番大きなホールに円卓が敷き詰められ、食事と飲み物が用意され、いろいろなグループが入り乱れて談笑を交わしました。ここでも、セッション中に聞きそびれてしまった質問をしたり、共同研究の打ち合わせをしたり、先輩研究者から耳の痛いアドバイスを受けたり、と最後までアカデミックな雰囲気を楽しみました。ホールに用意されたステージ上では、アカペラのコーラスグループやギターの弾き語りなどが場を盛り上げてくれましたが、誰もが期待していたフラダンスが登場しなかったのには少し残念でした(写真5)。フラダンスが本当に登場しないことを確認して、私たちのグループはワイキキの市街にあるバーへと場所を替え、かつて私たちの研究室に滞在していた、アメリカ、スペイン、パラオ、コロンビア、フランス、オーストラリア、オランダ、台湾などの外国人研究者たちと飲み直しました。 6日目の最終日にもいくらか興味のある発表はあったのですが、前日に飲み過ぎたせいもあり、昼頃に目を覚ませてからあとは観光に赴きました。せっかくハワイまで来たのだからと、ひとまずワイキキビーチに向かい、その先にある世界最古というワイキキ水族館を見学し、有名なビショップ博物館にも行きたかったのですが、こちらは思いのほか離れていて閉館時刻も早かったために、途中のアラモアナショッピングセンターで土産物を物色しました(写真6)。 今回の “Banquet” ではフラダンスが登場しなかった以外にも、もう一つ不思議なことがありました。通常であれば、最後の晩餐会中に次回4年後の国際サンゴ礁学会の開催地が発表されるのですが、今回はそれがなかったのです。どうやら大会期間中に結論が出せなかったようなのですが、今のところ日本も候補に挙がっているとのことです。日本でサンゴ礁と言えばもちろん沖縄ですが、実は沖縄では2004年に既に国際サンゴ礁学会が開催されているので、もし次のオリンピックイヤーに日本で開催されるとすれば、関東周辺もしくは九州が有力との見方です。もしかしたら、4年後の2020年にはみなさんの街の周辺で国際サンゴ礁学会が開催されているかもしれません。その時には是非、会場まで足をお運びになって、世界のサンゴ礁研究の最前線を直に感じてみてください(参加費を払えばどなたでも聴講が可能です)。私も4年後には、学生ではなく、博士として会場に立てるよう、これからの研究生活に邁進したいと思います。
写真5 Banquet晩餐会の様子
写真6 ワイキキビーチ  以上、国際サンゴ礁学会ハワイ大会体験記でした。 執筆者 水山 克
 今月のニュースレターは、ハワイのオアフ島で先月下旬に開催された「第13回国際サンゴ礁学会ハワイ大会」の様子をお届けします。 日本のサンゴ礁研究における中心"日本サンゴ礁学会" 日本で行われているサンゴ礁研究には、どのような分野がありどのような研究者が従事しているのかご存知でしょうか? 一口にサンゴ礁研究といっても、サンゴや熱帯魚といったサンゴ礁に暮らす生き物の研究(生物学)、サンゴ礁の生物から得られる化学物質の研究(化学)、死んだサンゴの骨格が堆積して形成されるサンゴ「礁」の地質に関する研究(地学)、世界の北限に位置する日本のサンゴ礁を支える温暖な海流の研究(海洋学)、沿岸開発などで衰退する日本のサンゴ礁を守るための研究(保全学)、サンゴ礁の経済価値や人との関わりについての社会学的研究(人文科学)など、そこには実に様々な研究テーマがあります。そのため、これらを研究する研究機関も多岐にわたり、国立大学では、東京大学、東北大学、東京工業大学、静岡大学、宮崎大学、そして私が所属する琉球大学などで多くの研究者が従事しています。大学以外では、国立環境研究所、黒潮生物圏研究センター、日本自然保護協会、美ら島財団、環境アセスメント会社などで盛んに研究が行われています。このような研究機関に在籍する研究者たち約600名が、年に1回開催される「日本サンゴ礁学会(JCRS)」という学会でその研究成果を報告し、互いに知識を深め合っています。 サンゴ礁研究者にとって 4年に1度のオリンピック"国際サンゴ礁学会" それでは世界のサンゴ礁研究についてはどうでしょうか? 日本と同じように、国内に「サンゴ礁学会」をもつ国としては、世界最大のサンゴ礁 “グレートバリアリーフ” を有するオーストラリア(ACRS)や、大西洋に面し日本とは大きく異なるサンゴ礁生態系がみられるメキシコ(SOMAC)などが挙げられます。あるいは、アジア太平洋サンゴ礁学会(APCRS)のように、サンゴ礁生態系をもつアジア諸国が集まって「サンゴ礁学会」を開催することもあります。このように、国内または近隣諸国の研究者同士で集まることは比較的たやすいのですが、遠く離れた地域ではそうはいきません。他の島々と隔絶した海洋島のサンゴ礁を研究するハワイ大学や、近年大規模な予算をかけた研究が始まり注目を浴びている中東のサウジアラビア、カリブ海や大西洋で活躍する中南米の研究者たちと顔を突き合わせて意見を交換する機会はなかなかありません。さらに、世界屈指の自然史博物館であるオランダのNaturalisに所属する研究者たちと交流する機会も滅多にありません。それらのサンゴ礁に関する世界中の研究者が一堂に会する貴重な機会が、4年に1度開催される「国際サンゴ礁学会(ICRS)」です。まさしく“サンゴ礁のオリンピック”と呼ぶにふさわしいイベントなのです。 第13回国際サンゴ礁学会ハワイ大会 今年の国際サンゴ礁学会は、2016年6月19日〜24日にアメリカ合衆国ハワイ州ホノルルのハワイ国際会議場で開催されました(写真1)。会場は全面ガラス張りの美しい建物で、1階ホールには受付とハワイが誇る世界最大の海洋保護区であるパパハナウモクアケア海洋国家遺産(Papahānaumokuākea Marine National Monument)に生息する海洋生物を紹介する写真展があり、ポスター発表兼昼食や休憩をとる大きな会場がありました(写真2)。2階には大小およそ30の部屋があり、全88テーマの口頭発表が行われました。3階には初日にウェルカムパーティが行われたテラスと、招待講演や総会、最終日前夜のパーティなどが行われた広い会議場がありました。 今回の学会は、総合テーマに “Bridging Science to Policy(科学と政策の架け橋に)” を掲げただけあって、開会セレモニーではパラオ共和国大統領によるパラオの海洋保全政策についての基調講演があり、全88セッションのうち約半数は各国がこれまでに取り組んできた保全策の評価、これからの保全のあり方などに関するものでした。残り半数のうち1/3はサンゴ礁が直面する危機に関するもので、地球温暖化や海洋酸性化、海面上昇など地球規模の大きなテーマから、沿岸開発、化学汚染、環境指標などより小さな地域規模でのテーマまで幅広くみられました。したがって、全体の2/3のセッションがサンゴ礁における危機的状況とそれに対する世界の取り組みに関係しており、世界中の研究者や政府、環境保護団体などが、いかにサンゴ礁を取り巻く現況を憂慮しているかが伺えます。もちろん残る1/3のセッションは “純粋な” サイエンス、つまり前節に取り上げたようなサンゴ礁生物に関する生物学、化学、地学などでした。そういう私も、沿岸に生息する貝類相を調べることで、「沖縄島の沿岸が過去40年間でどのように変化したか」を考察した研究報告をしたので、発表したセッションはどちらかと言えば前者側でした 。 国際サンゴ礁学会の公式発表によれば、この6日間に約2500人の参加者が世界各国から集まり、議論と交流が行われました。
写真1 ハワイ国際会議場
写真2 写真展“Archipelago” 私の学会発表と印象に残った発表 私が参加したセッションは、「Coastal pollution: nutrients, sewage and contaminants(沿岸域の汚染:栄養塩類、汚水、不純物)」で、「40 YEARS OF ENVIRONMENTAL DISTURBANCES AND MOLLUSK COMMUNITIES IN THE INTERTIDAL ZONE OF OKINAWA ISLAND, JAPAN.(沖縄の潮間帯における40年間におよぶ環境攪乱と貝類群集)」という演題でポスター発表を行いました(写真3)。ポスターの印刷はホノルル入りしてから会場の近くにある印刷業者で行い、発表にいたるまでが非常にぎりぎりとなってしまいましたが、何とか無事に発表に臨むことができました。大会初日のセッションだったせい?か、発表を見に来た研究者の数は好調とは言えませんでしたが、海外の研究者の方々に自身の研究成果を見て頂き、解析手法や今後の方向性についてのアドバイスを得ることができました(写真4)。発表内容については、こちらのニュースレターでまた紹介させて頂く機会があればと思いますが、簡単に言うと、40年前の沖縄本島沿岸でみられた貝類群集と2015年の沖縄本島沿岸でみられた貝類群集とでは貝類の種の構成が違っていて、これが人為的な影響かどうかを検証するためにはさらなる調査が必要である、という内容でした。 自身の発表をなんとか終え、残る5日間は気になる研究発表を聞いて回っていたわけですが、その中からサンゴ礁の起源に関するいくつかの研究をご紹介したいと思います。 現在の地球上でサンゴ礁における生物多様性の中心(生物の種類が最も多くその質も多様な場所)は、サンゴ類と魚類の分布から、フィリピン、インドネシア、パプアニューギニアを三角形に囲ったコーラルトライアングルと呼ばれる海域であると考えられています。今大会でのハワイ大のグループによる発表では、世界中のサンゴの化石記録を収集し、年代と地域を調査したところ、昔のサンゴ類の中心は今とは全く違う場所にあったようです。サンゴ化石は約6000万年前にテーチス海(現在のヨーロッパ、地中海周辺)で産出し、約2800万年前まではその海域で最も多様性が高く、約2100万年前から600万年前にかけてインド洋を経て太平洋に多様性の中心が移り、現在のコーラルトライアングルの多様性が最も高くなったのは約300万年前からである、という内容でした。さらにシンガポール大のグループによる発表では、近年蓄積されてきたサンゴの分子データを用いて、現生サンゴ類の進化の起源がどこにあるのかを調査したそうです。すると、推定された共通の祖先種は光合成を行わないサンゴ類であり、そこから光合成を行うサンゴ類が出現し、現在のサンゴ礁を形成するサンゴ類が飛躍的に多様化したという解釈になるようです。ハワイ大のグループの発表と合わせて考えてみると、かつてのテーチス海で生まれたサンゴ類ははじめ光合成を行っておらず、数千万年の時をかけて現在のコーラルトライアングルへと多様性の中心が移ってくる過程で、光合成を行って骨格を形成するサンゴ類が出現し、現在のサンゴ礁が形成されていったとう解釈になります。 現在のサンゴ類・サンゴ礁の姿がどのようにして成立したのかという点で非常に興味深く、どちらも論文として出版されるのが楽しみです。
写真3 私の国際サンゴ礁学会発表
写真4 ポスター発表会場の様子 ハワイ観光と次の開催地について このような調子で6日間の学会もあっという間に過ぎていき、5日目の夜は“Banquet”と呼ばれるパーティが開かれました。3階の一番大きなホールに円卓が敷き詰められ、食事と飲み物が用意され、いろいろなグループが入り乱れて談笑を交わしました。ここでも、セッション中に聞きそびれてしまった質問をしたり、共同研究の打ち合わせをしたり、先輩研究者から耳の痛いアドバイスを受けたり、と最後までアカデミックな雰囲気を楽しみました。ホールに用意されたステージ上では、アカペラのコーラスグループやギターの弾き語りなどが場を盛り上げてくれましたが、誰もが期待していたフラダンスが登場しなかったのには少し残念でした(写真5)。フラダンスが本当に登場しないことを確認して、私たちのグループはワイキキの市街にあるバーへと場所を替え、かつて私たちの研究室に滞在していた、アメリカ、スペイン、パラオ、コロンビア、フランス、オーストラリア、オランダ、台湾などの外国人研究者たちと飲み直しました。 6日目の最終日にもいくらか興味のある発表はあったのですが、前日に飲み過ぎたせいもあり、昼頃に目を覚ませてからあとは観光に赴きました。せっかくハワイまで来たのだからと、ひとまずワイキキビーチに向かい、その先にある世界最古というワイキキ水族館を見学し、有名なビショップ博物館にも行きたかったのですが、こちらは思いのほか離れていて閉館時刻も早かったために、途中のアラモアナショッピングセンターで土産物を物色しました(写真6)。 今回の “Banquet” ではフラダンスが登場しなかった以外にも、もう一つ不思議なことがありました。通常であれば、最後の晩餐会中に次回4年後の国際サンゴ礁学会の開催地が発表されるのですが、今回はそれがなかったのです。どうやら大会期間中に結論が出せなかったようなのですが、今のところ日本も候補に挙がっているとのことです。日本でサンゴ礁と言えばもちろん沖縄ですが、実は沖縄では2004年に既に国際サンゴ礁学会が開催されているので、もし次のオリンピックイヤーに日本で開催されるとすれば、関東周辺もしくは九州が有力との見方です。もしかしたら、4年後の2020年にはみなさんの街の周辺で国際サンゴ礁学会が開催されているかもしれません。その時には是非、会場まで足をお運びになって、世界のサンゴ礁研究の最前線を直に感じてみてください(参加費を払えばどなたでも聴講が可能です)。私も4年後には、学生ではなく、博士として会場に立てるよう、これからの研究生活に邁進したいと思います。
写真5 Banquet晩餐会の様子
写真6 ワイキキビーチ  以上、国際サンゴ礁学会ハワイ大会体験記でした。 執筆者 水山 克
 今月のニュースレターは、ハワイのオアフ島で先月下旬に開催された「第13回国際サンゴ礁学会ハワイ大会」の様子をお届けします。 日本のサンゴ礁研究における中心"日本サンゴ礁学会" 日本で行われているサンゴ礁研究には、どのような分野がありどのような研究者が従事しているのかご存知でしょうか? 一口にサンゴ礁研究といっても、サンゴや熱帯魚といったサンゴ礁に暮らす生き物の研究(生物学)、サンゴ礁の生物から得られる化学物質の研究(化学)、死んだサンゴの骨格が堆積して形成されるサンゴ「礁」の地質に関する研究(地学)、世界の北限に位置する日本のサンゴ礁を支える温暖な海流の研究(海洋学)、沿岸開発などで衰退する日本のサンゴ礁を守るための研究(保全学)、サンゴ礁の経済価値や人との関わりについての社会学的研究(人文科学)など、そこには実に様々な研究テーマがあります。そのため、これらを研究する研究機関も多岐にわたり、国立大学では、東京大学、東北大学、東京工業大学、静岡大学、宮崎大学、そして私が所属する琉球大学などで多くの研究者が従事しています。大学以外では、国立環境研究所、黒潮生物圏研究センター、日本自然保護協会、美ら島財団、環境アセスメント会社などで盛んに研究が行われています。このような研究機関に在籍する研究者たち約600名が、年に1回開催される「日本サンゴ礁学会(JCRS)」という学会でその研究成果を報告し、互いに知識を深め合っています。 サンゴ礁研究者にとって 4年に1度のオリンピック"国際サンゴ礁学会" それでは世界のサンゴ礁研究についてはどうでしょうか? 日本と同じように、国内に「サンゴ礁学会」をもつ国としては、世界最大のサンゴ礁 “グレートバリアリーフ” を有するオーストラリア(ACRS)や、大西洋に面し日本とは大きく異なるサンゴ礁生態系がみられるメキシコ(SOMAC)などが挙げられます。あるいは、アジア太平洋サンゴ礁学会(APCRS)のように、サンゴ礁生態系をもつアジア諸国が集まって「サンゴ礁学会」を開催することもあります。このように、国内または近隣諸国の研究者同士で集まることは比較的たやすいのですが、遠く離れた地域ではそうはいきません。他の島々と隔絶した海洋島のサンゴ礁を研究するハワイ大学や、近年大規模な予算をかけた研究が始まり注目を浴びている中東のサウジアラビア、カリブ海や大西洋で活躍する中南米の研究者たちと顔を突き合わせて意見を交換する機会はなかなかありません。さらに、世界屈指の自然史博物館であるオランダのNaturalisに所属する研究者たちと交流する機会も滅多にありません。それらのサンゴ礁に関する世界中の研究者が一堂に会する貴重な機会が、4年に1度開催される「国際サンゴ礁学会(ICRS)」です。まさしく“サンゴ礁のオリンピック”と呼ぶにふさわしいイベントなのです。 第13回国際サンゴ礁学会ハワイ大会 今年の国際サンゴ礁学会は、2016年6月19日〜24日にアメリカ合衆国ハワイ州ホノルルのハワイ国際会議場で開催されました(写真1)。会場は全面ガラス張りの美しい建物で、1階ホールには受付とハワイが誇る世界最大の海洋保護区であるパパハナウモクアケア海洋国家遺産(Papahānaumokuākea Marine National Monument)に生息する海洋生物を紹介する写真展があり、ポスター発表兼昼食や休憩をとる大きな会場がありました(写真2)。2階には大小およそ30の部屋があり、全88テーマの口頭発表が行われました。3階には初日にウェルカムパーティが行われたテラスと、招待講演や総会、最終日前夜のパーティなどが行われた広い会議場がありました。 今回の学会は、総合テーマに “Bridging Science to Policy(科学と政策の架け橋に)” を掲げただけあって、開会セレモニーではパラオ共和国大統領によるパラオの海洋保全政策についての基調講演があり、全88セッションのうち約半数は各国がこれまでに取り組んできた保全策の評価、これからの保全のあり方などに関するものでした。残り半数のうち1/3はサンゴ礁が直面する危機に関するもので、地球温暖化や海洋酸性化、海面上昇など地球規模の大きなテーマから、沿岸開発、化学汚染、環境指標などより小さな地域規模でのテーマまで幅広くみられました。したがって、全体の2/3のセッションがサンゴ礁における危機的状況とそれに対する世界の取り組みに関係しており、世界中の研究者や政府、環境保護団体などが、いかにサンゴ礁を取り巻く現況を憂慮しているかが伺えます。もちろん残る1/3のセッションは “純粋な” サイエンス、つまり前節に取り上げたようなサンゴ礁生物に関する生物学、化学、地学などでした。そういう私も、沿岸に生息する貝類相を調べることで、「沖縄島の沿岸が過去40年間でどのように変化したか」を考察した研究報告をしたので、発表したセッションはどちらかと言えば前者側でした 。 国際サンゴ礁学会の公式発表によれば、この6日間に約2500人の参加者が世界各国から集まり、議論と交流が行われました。
写真1 ハワイ国際会議場
写真2 写真展“Archipelago” 私の学会発表と印象に残った発表 私が参加したセッションは、「Coastal pollution: nutrients, sewage and contaminants(沿岸域の汚染:栄養塩類、汚水、不純物)」で、「40 YEARS OF ENVIRONMENTAL DISTURBANCES AND MOLLUSK COMMUNITIES IN THE INTERTIDAL ZONE OF OKINAWA ISLAND, JAPAN.(沖縄の潮間帯における40年間におよぶ環境攪乱と貝類群集)」という演題でポスター発表を行いました(写真3)。ポスターの印刷はホノルル入りしてから会場の近くにある印刷業者で行い、発表にいたるまでが非常にぎりぎりとなってしまいましたが、何とか無事に発表に臨むことができました。大会初日のセッションだったせい?か、発表を見に来た研究者の数は好調とは言えませんでしたが、海外の研究者の方々に自身の研究成果を見て頂き、解析手法や今後の方向性についてのアドバイスを得ることができました(写真4)。発表内容については、こちらのニュースレターでまた紹介させて頂く機会があればと思いますが、簡単に言うと、40年前の沖縄本島沿岸でみられた貝類群集と2015年の沖縄本島沿岸でみられた貝類群集とでは貝類の種の構成が違っていて、これが人為的な影響かどうかを検証するためにはさらなる調査が必要である、という内容でした。 自身の発表をなんとか終え、残る5日間は気になる研究発表を聞いて回っていたわけですが、その中からサンゴ礁の起源に関するいくつかの研究をご紹介したいと思います。 現在の地球上でサンゴ礁における生物多様性の中心(生物の種類が最も多くその質も多様な場所)は、サンゴ類と魚類の分布から、フィリピン、インドネシア、パプアニューギニアを三角形に囲ったコーラルトライアングルと呼ばれる海域であると考えられています。今大会でのハワイ大のグループによる発表では、世界中のサンゴの化石記録を収集し、年代と地域を調査したところ、昔のサンゴ類の中心は今とは全く違う場所にあったようです。サンゴ化石は約6000万年前にテーチス海(現在のヨーロッパ、地中海周辺)で産出し、約2800万年前まではその海域で最も多様性が高く、約2100万年前から600万年前にかけてインド洋を経て太平洋に多様性の中心が移り、現在のコーラルトライアングルの多様性が最も高くなったのは約300万年前からである、という内容でした。さらにシンガポール大のグループによる発表では、近年蓄積されてきたサンゴの分子データを用いて、現生サンゴ類の進化の起源がどこにあるのかを調査したそうです。すると、推定された共通の祖先種は光合成を行わないサンゴ類であり、そこから光合成を行うサンゴ類が出現し、現在のサンゴ礁を形成するサンゴ類が飛躍的に多様化したという解釈になるようです。ハワイ大のグループの発表と合わせて考えてみると、かつてのテーチス海で生まれたサンゴ類ははじめ光合成を行っておらず、数千万年の時をかけて現在のコーラルトライアングルへと多様性の中心が移ってくる過程で、光合成を行って骨格を形成するサンゴ類が出現し、現在のサンゴ礁が形成されていったとう解釈になります。 現在のサンゴ類・サンゴ礁の姿がどのようにして成立したのかという点で非常に興味深く、どちらも論文として出版されるのが楽しみです。
写真3 私の国際サンゴ礁学会発表
写真4 ポスター発表会場の様子 ハワイ観光と次の開催地について このような調子で6日間の学会もあっという間に過ぎていき、5日目の夜は“Banquet”と呼ばれるパーティが開かれました。3階の一番大きなホールに円卓が敷き詰められ、食事と飲み物が用意され、いろいろなグループが入り乱れて談笑を交わしました。ここでも、セッション中に聞きそびれてしまった質問をしたり、共同研究の打ち合わせをしたり、先輩研究者から耳の痛いアドバイスを受けたり、と最後までアカデミックな雰囲気を楽しみました。ホールに用意されたステージ上では、アカペラのコーラスグループやギターの弾き語りなどが場を盛り上げてくれましたが、誰もが期待していたフラダンスが登場しなかったのには少し残念でした(写真5)。フラダンスが本当に登場しないことを確認して、私たちのグループはワイキキの市街にあるバーへと場所を替え、かつて私たちの研究室に滞在していた、アメリカ、スペイン、パラオ、コロンビア、フランス、オーストラリア、オランダ、台湾などの外国人研究者たちと飲み直しました。 6日目の最終日にもいくらか興味のある発表はあったのですが、前日に飲み過ぎたせいもあり、昼頃に目を覚ませてからあとは観光に赴きました。せっかくハワイまで来たのだからと、ひとまずワイキキビーチに向かい、その先にある世界最古というワイキキ水族館を見学し、有名なビショップ博物館にも行きたかったのですが、こちらは思いのほか離れていて閉館時刻も早かったために、途中のアラモアナショッピングセンターで土産物を物色しました(写真6)。 今回の “Banquet” ではフラダンスが登場しなかった以外にも、もう一つ不思議なことがありました。通常であれば、最後の晩餐会中に次回4年後の国際サンゴ礁学会の開催地が発表されるのですが、今回はそれがなかったのです。どうやら大会期間中に結論が出せなかったようなのですが、今のところ日本も候補に挙がっているとのことです。日本でサンゴ礁と言えばもちろん沖縄ですが、実は沖縄では2004年に既に国際サンゴ礁学会が開催されているので、もし次のオリンピックイヤーに日本で開催されるとすれば、関東周辺もしくは九州が有力との見方です。もしかしたら、4年後の2020年にはみなさんの街の周辺で国際サンゴ礁学会が開催されているかもしれません。その時には是非、会場まで足をお運びになって、世界のサンゴ礁研究の最前線を直に感じてみてください(参加費を払えばどなたでも聴講が可能です)。私も4年後には、学生ではなく、博士として会場に立てるよう、これからの研究生活に邁進したいと思います。
写真5 Banquet晩餐会の様子
写真6 ワイキキビーチ  以上、国際サンゴ礁学会ハワイ大会体験記でした。 執筆者 水山 克